自分はUX/UIデザインのアプローチの中で、特にブランドに関することに重点を置いています。なぜなら、ブランド体験とUXは表裏一体であると捉えているからです。もしUXがユーザビリティだけに言及しているだけならば、こういう捉え方はありえないですが、製品やサービスの利用によって得た価値や共感がブランドに対するイメージに大きな影響を与えるため、本質的に考えればUXデザインのアプローチではブランドは無視できない要素なのです。しかし、実際には多くのプロジェクトでUXデザインとブランド開発をしっかり結びつけて実践している企業は少ないように感じます。これは、多くのケースでブランドを担当する部署とUXデザインを担当する部署が同じでないことや、ブランドの適用がコミュニケーション側に重きが置かれていること、そしてブランドの理解がそもそもなさすぎることが原因だと思います。

そこで、UXデザインの中でブランド開発がなぜそんなに重要なのか、ビジネス開発の側面とあわせて説明していきます。

black and brown plastic bottle on white wooden shelf

皆さんは、ブランド開発と聞いてどういうブランドを思い描きますか?様々なクライアントワークに関わってきた中で、Aesopのブランド開発にかける情熱と設計は非常に目を見張るものがありました。

ブランド開発=子育て

今まで様々なプロジェクトでブランドに関することをプレゼンしてきましたが、色んなウンチクがあれど、結局はブランド開発は子育てと同じようなものだと捉えています。子供が生まれるとまず名前を与えます。そして、親の目線で子供に似合うであろう服や子ども部屋を装飾し、そして健康に良いと思われる食事を与え、将来社会に出たときに困らないように様々なことを教えていきます。この子育ての基本的に必要なことをブランド開発に必要なことに置き換えると

  • 名前を与える=ブランド名をつける
  • 服や部屋を装飾する=ブランドスタイルガイド
  • 健康に良い食事=PR、実績づくり(ブランドに元気を与える作業)
  • 社会的レッスン=メディア・コミュニケーション戦略(どういう発言をしていくか)

なんとブランド開発に必要なこととほぼ一致します。当然ですが、子育ての中でこれらを適当にやっている親はいないと思います。親自身の経験や環境をベースに色々考えて、子供が自立するまで様々なことを決めて与えているはずです。特に教育熱心な親のもとでは、学業が少しでも有利になるような育て方をしているでしょうし、そうではなく、ライフスタイルを重視するような育て方の親もいます。育て方が多種多様であれど、どの親も何かしらの労力と努力をかけているはずです。

しかし、これを事業のブランド開発に置き換えた場合、驚くほどに労力をかけていない企業が多いのです。なぜでしょう?自分が見てきたなかで、とくにB2B事業とテック系ビジネスとアカデミック分野で顕著に見られるのですが、自分達はB2C事業だからブランディングは必要ないと、自分達のビジネスにはそもそもブランディングなんて必要ないと考えていることだったり、テック系ビジネスではエンジニア職の人材が圧倒的に多いので、ブランド自体を軽視されがちだったりといった理由が多いです。しかし、これでは持続してビジネスを行うことはできませんし、何よりもビジネス成長で必ずつまづきます。

見た目がみすぼらしくなければ、子供だから何着ても別に良いという考えを、ある程度は親の皆さん持っていると思いますが、それでもある年齢までは親の好みで子供の服を選びますよね?

a little girl standing on top of a sidewalk

SaaSとアパレルを比較して考えてみる

まず、UXデザインはビジネスの中心になる製品やサービス、ソリューション、コミュニケーションの開発に使われる手段です。成果物がモバイルアプリなのかホームページなのか、はたまたスマートウォッチやマグカップなのか関係なく、成果として生み出していくものすべてが、ブランドイメージと直結します。これをアパレル事業の中で考えてみましょう。

アパレルのプロダクトデザインでは、着心地だったりシルエットといったユーザーにとって良いと感じられる価値を念頭に開発していきますが、ユーザー中心の製品設計という点ではUXデザインとほとんど変わりません。そしてアパレルの商品というのはブランドイメージと強く連携するため、どの企業もブランディングに徹底して力をいれています。また、売っていくためにもブランドイメージがなければ売りにくいので、必然とブランディングに対するウエイトは大きくなります。おそらくブランディングができなければ、アパレル事業というのは成立しにくいんじゃないかと思います。それぐらいブランディングと製品開発の2つを徹底的に管理し、インテグレーションしているのがアパレル業界です。

これをSaaSに置き換えて考えてみましょう。何か特定のビジネス課題を解決するようなソリューション型であれば、使い勝手が多少悪くても課題解決したい人にとっては必要なもので、それが手に入れられる値段であれば、見た目がどうでも恐らく購入して使うと思います。

しかし、インターネットビジネスが活性化しだした2000年前半と違い、現在では様々な類似サービスがあふれており、サービスだけでなく事業体のホームページも数えられないぐらい存在しています。つまり、競合と情報で溢れかえっているわけですが、こういった状況の中でビジネスをするためにはブランドがなければ、他社との差別化はもちろんですが、セールスコミュニケーションが非常にとりづらくなってきます。しかし、多くのSaaSが立ち上げ時からブランドを意識しているとは言い難く、もちろん最低限のもの、ロゴやカラーパレット、フォントなど用意されていますが、戦略的に設計されて開発されたものとは言えないものばかりです。

SaaSは利用者がいなければビジネスにならないので、ブランディングに関するリソースを使うよりも、製品に関するリソースを割くほうが優先されるのは理解できますが、これはそもそも経営的に分断して考えているために起きてしまっている現象です。業界関係なくシンプルに考えてですが、競合で溢れかえっている市場で優位にビジネスを進めるためには、見た目がよくなければ売れません。この本質的なことがSaaS業界の中では軽視されている気がします。

a computer screen with a drawing of two people talking to each other

Notionはノート系アプリがすでに市場に多く溢れていた2016年にローンチされていますが、競争の激しい市場でここまで成長できているのは、ブランド開発を徹底的にやっているからです。一見シンプルに感じられるブランドイメージですが、緻密な設計と管理があるからこそ達成できているのです。

UXデザインとブランド開発の調和

ブランド開発が子育てと同じぐらい重要なものだという意識があれば、UXデザインを適用するのがSaaSでもアパレルでも成果物関係なくビジネスを行う上で必要なものとだということに気づくと思います。しかし、実際にはブランド開発が自分の事業には最初から必要ないと思っている人たちが多いのが現状です。とくに、日本のように政治で売るようなビジネス文化が大きい市場だと、そもそもブランド自体なくてもある程度ビジネスができてしまうため、経営の中にブランドの意識が欠如しています。また、ブランディング=金がかかるものと思ってる人が多く、確かに多くのコストがかかりますが、自分の子供に対しても同じように考える親はいますでしょうか?もちろん親の収入に応じて子育てにかけられる金額は変わってくるため、全員が同じ規模感や強度でできないですが、でもお金がないからと言って完全に子育てを放棄しませんよね?また、子作り自体、自身の経済状況を考えながら計画している家庭が一般的だと思いますが、ビジネスでも同じことです。収入がなければ子作りは現実的には難しいですよね?

このようにブランド開発と子育てを同じレイヤーで考えると、新製品・サービスという子供を育てていくためには、UXデザインの中でブランド開発を一緒に考える必要がある理由は明確に理解できるはずです。そして、その適用は業界も市場も関係ないのです。UXデザインをユーザビリティだけに言及しているとこの点に気づきませんが、UXデザインを文字通り誰かの経験をデザインするものだという理解と認識が十分にあれば、その経験はユーザーの知覚体験そのものになっていき、その知覚体験がブランドイメージへと繋がっていくことは容易に想像できると思います。そして、SaaSのように何もないところから形を仕上げていく製品は、本来であればアパレルと同じようにイメージ戦略をもっておいたほうが、ビジネスは遥かに実行しやすくなるのも想像しやすいと思います。それぐらい、UXデザインとブランド開発は表裏一体なのです。

焦らず専門家にまず相談しよう

プロジェクトの内容に関わらず、なるべく早いタイミングでUXデザインの専門家に相談することが、UXデザインをスムーズに実践するための最善策です。場合によってはUXデザイナーが必要ではなく、UIデザイナーで対応できる話かもしれませんし、そもそもUXデザイナーという外部の専門家にお願いしなくても、チーム内のリソースだけで対応できる話かもしれません。

このような判断をプロジェクトの開始時点で行うことができれば、無駄なコストをかけずに進めることが可能です。UXデザインをどのように開始するのか悩んでいたら、是非お気軽にお問い合わせください。無料でご相談受け付けています。

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Genki Brothersでは一人でも多くの方にUX/UIデザインの理解を深めていただくために、UX/UIデザインに関してまとめたガイドラインを無料配布しています。これは、Genki Brothersの創業者であり、UX/UIデザイナーでもある私、河村が、「人との繋がり」UXデザインして立ち上げたスタートアップ事業「コネクト」をベースに書き上げたものです。この機会にご興味ありましたら、下記フォームよりお申込みください。自動返信案内にてダウンロードリンクをご案内しております。

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