バイアスとヒューリスティックについて書かれたUX/UI デザイン関連の内容をここ何年かで多く見かけます。それらがどう違うとか、どう活かすとかの議論の前に、知覚と認知自体がデザインだけでなく、マーケティングそのものに多大なる影響とマーケティングを構成する要素になっているという根本的な理解がまず必要です。マーケティングが変化してきたから、UX/UIデザインの必要性があることは過去の記事で説明しましたが、製品やサービスの質や値段以上に価値そのものを言及される時代になったため、知覚と認知の理解がより鍵を握る時代になっているわけです。

そこでバイアスとヒューリスティックをテーマに、何回かにわけてUX/UIデザインの理解を掘り下げていきます。

富士山に登ったか、エベレストに登ったかの違い

バイアスとヒューリスティックの言葉の意味については様々なメディアでされていますが、わかりやすい身近で想像しやすいモノゴトをベースに理解を広げていきます。プロジェクトを通していつも説明しているのが、登山です。例として

  1. 全く登山したことない人
  2. 富士山(標高3,776m)に登ったことがある人
  3. エベレスト(標高8,849m)に登ったことがある人

この3パターンの人にキリマンジャロ(標高5,895m)に登山するというオファーをしていると想像をしてみてください。

まず、全く登山したことのない人は、山の高さに関係なく登山自体がどういう体験なのか知らないので、キリマンジャロに登山できるかどうかの可能性や、登山で得られる価値を期待すること は非常に難しいと思われます。

富士山に登ったことがある人は、標高3,776mまでの体験があるので、キリマンジャロの登山に対して割とポジティブなイメージを持つだろうと思われます。そして登山のどういった準備が必要か、ある程度予測がたてられると思います。しかし、富士山より高い山に登ったことがないので、未知な部分があり恐怖を感じるだろうことも想像できます。

エベレストに登ったことがある人は、それまでに相当な訓練を受けているはずなので、エベレストよりも標高の低いキリマンジャロの登山に対して、様々なポジティブなイメージを持つだろうと思われます。エベレストほど難しくなく、命の危険も少ないであろうといった類です。

全く登山したことない人は登山の知覚体験がないので、事前に把握してる様々な情報のみでキリマンジャロ登山の大変さを判断します。まさにこれがバイアスです。

富士山に登山したことがある人は、「キリマンジャロに登山したことがない」という点では登山経験なしの人と同じ状況ですが、大きく異なるのは高い山に登ったことがあるかどうかです。富士山という高い山に登ったことがあるので、キリマンジャロという登ったことがない山でも、登山を成功させるために様々な考えをもつことができます。これが「ヒューリスティック」です。と言いたいところですが、実はバイアスでもあります。

これは、エベレストに登ったことがある人を考えるとわかりやすいです。エベレストに登ったことがある人は、標高8,849mまでの大変さをわかっているので、それよりも低い山には当然登れるものと思いますし、富士山だけにしか登山しかことない人と比較して、キリマンジャロ登山の準備に対する姿勢や質はかなり違うものになるだろうというのは予想できます。また、富士山より高い山からの景色の素晴らしさを知っています。

つまり、富士山登山者とエベレスト登山者のそれぞれの立場で比較した場合に、それがバイアスなのかヒューリスティックなのかの議論が出てくるのです。エベレスト登山者からすると、富士山以上の高さに登山したことのない人の意見は、何をいってもバイアスに聞こえてしまいます。それはエベレスト登山の自身の経験が影響しているからです。素晴らしい景色かどうかだったり、安全かどうかは登山した人にしかわからないのです。しかし、富士山登山者からすると、自身の経験をもってそれ以上に高い山にどう登山するのかヒューリスティック的な判断が働きます。

確証バイアスとは、自分がすでに持っている先入観や仮説を肯定するため、自分にとって都合のよい情報ばかりを集める傾向のことです。認知バイアスの一種で、自分の思い込みや周囲の要因によって非合理的な判断をしてしまう心理現象です。

学問の発達とそれがもたらす複雑さ

ヒューリスティックという聞き慣れない言葉は、そもそも心理学用語で、行動経済学という学問の中で熱心に研究されています。行動経済学というのもあまり聞き慣れない言葉だと思われますが、当初は主流派経済学に対する批判的な研究として生まれたが、1990年代以降の急速な発展を経て米国では既に主流派経済学の一部として扱われるようになった学問です。このように、心理的作用が学問の発達によって研究・説明できるようになってきたわけですが、UX/UIデザインもまさにこういった影響を受けて、複雑さをましているのです。

新しい言葉の概念によって説明が容易になることはありがたい話ですが、逆に新しい言葉の知識を身につけなければ理解できないといった風になってしまい、結果として学術過ぎるが故に理解されにくいという現象になっています。これでは、せっかく素晴らしい手法であるUX/UIデザインに簡単にアクセスすることができなくなってしまいます。そのため、登山のような身近なモノゴトに置き換えて説明してみました。そして、登山のケースで想像できるように、対象者が過去にどういった体験をしているのかで、製品やサービスに対する期待や認知がかわってきます。まさに、これがバイアスなのかヒューリスティックなのかの議論に繋がっていくわけです。

ヒューリスティックとは、意思決定の場面において、緻密な論理で一つ一つ確認しながら判断するのではなく、経験則や先入観に基づく直感で素早く判断することをいいます。メンタルのショートカットで、ある程度正解に近いレベルの答えを導き出すことですが、必ずしも正しいとは限りません。

デザイン思考の重要性

バイアスやヒューリスティック、知覚、認知と小難しい学術用語がたくさん出てきていますが、これも全てはUXデザインというのが、ユーザーの製品やサービスの「体験」をデザインするためにあるからです。この「体験」をデザインするためには、知覚体験と認知をどのようにコントロールするかが求められるため、自然と難しい学問の話が関連してくるわけです。

さきほどの登山の例をもとに登山グッズを考えてるともっとわかりやすいです。富士山登山者用に新しい登山グッズを開発しようと思ったら、誰にユーザーインタビューするのが最適でしょうか?答えは明確ですよね?エベレスト登山経験者にインタビューするよりも、何百回と富士山に登山したことのあるベテランに聞いたほうがグッズ開発に効果的な意見を集めることができます。

と、これはまさにバイアスとヒューリスティックそのものです。「集めることができます。」と断言していますが、この記事を書いてる筆者の自分自身、登山経験は全くありません。想像と経験の中で勝手にこうであろうという憶測をたて、富士山登山のグッズなんだから、当事者に聞いたほうが早いと決めつけているだけです。偏った意見であり、これがバイアスです。

間違いではないかもしれませんが、グッズ開発に対して良い意見がもらえるかどうかは、ユーザーインタビューしてみないとわかりません。要はやってみないとわからない話なのです。しかし、恐らくかなりな確率で富士山登山経験者に聞く手段を最初に皆さんも取ると思います。これがヒューリスティックです。先入観・経験などに基づいて正しそうな結論を見つける方法なわけですが、言い換えると、誰もが成功しやすいと思う方法を取る方法なのです。

しかしUXデザインとしてアプローチするべきことは、エベレスト経験者や登山未経験者にもインタビューをし、「問題や課題の洗い出し」や「解決策の絞り込み」に異論はないか、おかしな点はないかなど包括的にリサーチすることです。デザイン思考で言われている通り、直線的な思考とアプローチではいけないのです。もしかしたらエベレスト登山経験者にしか見えない部分というものがあるかもしれませんし、その部分というのが唯一無二の価値にかわっていく可能性があるからです。

焦らず専門家にまず相談しよう

プロジェクトの内容に関わらず、なるべく早いタイミングでUXデザインの専門家に相談することが、UXデザインをスムーズに実践するための最善策です。場合によってはUXデザイナーが必要ではなく、UIデザイナーで対応できる話かもしれませんし、そもそもUXデザイナーという外部の専門家にお願いしなくても、チーム内のリソースだけで対応できる話かもしれません。

このような判断をプロジェクトの開始時点で行うことができれば、無駄なコストをかけずに進めることが可能です。UXデザインをどのように開始するのか悩んでいたら、是非お気軽にお問い合わせください。無料でご相談受け付けています。

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