仕事柄、新規事業のアイデアについて頻繁に相談されるのですが、アイデアの中身がなんであれ、モバイルアプリやシステム開発を使うことが前提になっていたり、何かしらのテクノロジーを使うことが絶対条件として最初から決められていることが多々あります。もちろんオペレーションを効率よく行うためや、利便性や新しい価値を創出するためにテクノロジーを駆使したアプリやシステムを使う前提は理にかなっています。しかし、開発の時間やプロセスを話すと、アイデアを諦めるケースが多々あります。こういったケースの多くは、開発にどれだけコストがかかるのかわからない、テクノロジーに関わっていない人たちからが大半で、時間的コストまたは金銭的コストが見合わないという判断からですが、こういったアプローチでは新しい価値を生み出す新規事業をデザインすることはできません。

そこで、システムやモバイルアプリ開発の経験や知識がない方たちのために、テクノロジーをベースとした新製品やサービス開発の基本的かつとても重要なことをいくつか説明していきます。

開発にかかる必要なリソースを知る

システムやモバイルアプリの開発は、以前と比較して様々なライブラリーやツールがあるおかげで大幅にコストは下がったものの、開発にかかわる必要人材の削減になっているわけではありません。技術進歩がある限り、開発言語やデザイン作業するソフトの機能は進化しつづけますし、様々なことが以前よりも短時間で実装することが可能になってきた反面、結局のところ必要な領域の技術職に変化はありません。

SaaSを代表するテック系製品には、少なくてもこの7つの職能が必要です。どれか1つでも欠けていると製品としては成立しにくいです。

予算と時間に余裕がある場合は、この職能ごとで1人づつ人材を確保できますが、だいたいはセールスとマーケティング、UXとUIデザイナーは兼任していますし、UIデザイナーとフロントエンドエンジニアを兼任するケースもあります。プロジェクトマネージャーは多くのケースで最初からメンバーにいないことが多いですが、進捗やタスク管理は必要なのでプロジェクトマネージメント自体の必要性がなくなっているわけではありません。

また、プロジェクト開始時に何人のメンバーで始められるかは、事業オーナーの役割や背景、チームメンバーのスキル・経験値で大幅に変わってきますが、今まで多くの案件に関わってきた経験からすると、少なくても3人は必要です。

いくらで販売できるのか?ビジネスモデル維持のために必要な売上は?

SasSも含めテック系モデルの販売価格には、明確な相場というものがありません。しかし、多くの競合間では値段競争を避けるために、だいたいが似たような値段で販売しています。また、利用するユーザーにとってあまりにも高額すぎると継続して使い続けるのが困難なため、非常に考えられた戦略的な値段設定で販売しているところがほとんどで、無料〜エンタープライズ版まで幅広くプランを用意しています。

SaaS業界では様々な価格戦略が使われていますが、最も使われているのは価値に基づいた価格です。つまり、言い値で納得して使ってるケースが大多数ということです。車と同じですね。新車を買うときに、なぜその値段で売られているのか細かいところまで納得していますか?

SaaSモデルでは、有料ユーザーが5,000人を超えるとビジネスとして成功しやすいと良く言われてますが、仮に5,000人をベースに一度考えてみましょう。5,000人全員が毎月980円払って製品利用しているとすると、

5,000 x 980 x 12 = 58,800,000円/年

年間で約60,000,000円いかない程度の売上です。そして、この売上を維持するためには、

  • セールス
  • マーケティング
  • UIデザイン
  • フロントエンド開発
  • バックエンド開発

少なく見積もっても、この5つの職能は必要です。それぞれの職能ごとに何人の人材が必要になるかは、製品の売り方や利用ユーザーへの教育の必要性など様々な要因が複雑に関係しているため、はっきりさせることはできません。しかし、少なく見積もっても3,4人は必ず必要なはずです。ただ、人数が少ない=1人で何役も異なる職能を兼任することになるため、そんなスーパーマンみたいな人材はなかなかいませんし、いたとしても実行するタスクが多くなるだけで過労死まっしぐらです。なので、単純に職能ごとで1人つづ必要という考えでいたほうが無理なく進められるでしょう。ただ、6,000万の売上に対して5人の人材が必要だとすると、当然ですが、必要な人数が多いほど1人あたりの報酬は少なくなるので、ビジネスオーナー的には少ない人数でやれたほうがいいに決まっています。

SaaS事業特有の売り方と成長を知る。

ビジネスとしては、製品開発を短期間で低コストで行い、一日でも早く開発にかかったコストの改修が使命ですが、テック系製品の中でもSaaSにはあまりこの考えは適してないです。なぜなら製品がユーザーとともに常に成長し続ける必要があるビジネスモデルだからです。すでに説明したように、大人数だろうが少人数で開発しようが、開発してビジネスが終わりではなく、開発して製品が完了してからがビジネスのスタートです。そしてビジネススタート後にユーザーからのフィードバックに常に耳を傾け彼らが満足する状態を常に創り出していかなければいけません。満足する状態が続かなければビジネスになりにくく、つまり継続して製品を開発・改修していく必要があるのです。

継続しながらというのは、常にリソースが必要な状況です。つまり、事業の開始時に4人で始めようが2人で始めようが、製品開発ができる人材はチーム内かアウトソースかの雇用形態に関わらず、常に必ずチームの側にいなければ意味がありません。そして、このリソースをどう活用して効率よく進められるかマネージメントスキルが結果的には製品開発に大きな影響を及ぼします。ただ単に予算用意して作業開始すればいい話ではありません。

大事なことは、製品の中身がどうであれ、決して1人で全てを実装できることではないということ、そしてチームとして動く必要があるため、必要な人数分の人件費が常にかかるのがテクノロジーをベースとした新製品やサービス開発の根本的なコスト構造であることを理解することです。小売業のように何かを仕入れて売るというわけではないので、製品在庫を抱える必要がない反面、人材という在庫を常にもっておかなければいけないのです。

また、システムやモバイルアプリ開発の経験や知識がない方たちにとっては、開発コストは自身が知らない未知のことに対する内容なため、判断するときに現状維持バイアスが大きく作用します。つまり、慣れ親しんだことや失敗しない選択肢を選びがちなので、数字という見てわかりやすい情報をもとに判断し、それが自身の経験から見て高いと感じてしまうことで、結果的に諦めてしまうのです。現状維持バイアスは人間誰しもが持っている本能的なことなので、こういう判断になってしまうのは致し方ないことなのですが、経験したことがない知らないことに対しては、極力バイアスがかからないような判断能力を心がけることが大切です。

テックベースの新規事業を考えるときは、システムやモバイルアプリの中身や方法を先に考えるのではなく、なぜそのビジネスをするのか、関わる意味とそれに対して時間をどのくらいチームとして確実に割くことができるか、リソースの確約が重要です。ビジネスをするのが開発の面倒くささやかかるコストの大きさで諦めるというのは、そもそも当人にとって必ずしもやる必要のないものだというのを態度で示してしまっています。想定外のコストがかかるようなケースは例外ですが、それはお金を優先して考えているためであり、価値があり確実に市場にインパクトを与えられる事業であれば、開始するためのハードルが高くてもチームとしてコストという課題を乗り越えて実現するはずです。

焦らず専門家にまず相談しよう

プロジェクトの内容に関わらず、なるべく早いタイミングでUXデザインの専門家に相談することが、UXデザインをスムーズに実践するための最善策です。場合によってはUXデザイナーが必要ではなく、UIデザイナーで対応できる話かもしれませんし、そもそもUXデザイナーという外部の専門家にお願いしなくても、チーム内のリソースだけで対応できる話かもしれません。

このような判断をプロジェクトの開始時点で行うことができれば、無駄なコストをかけずに進めることが可能です。UXデザインをどのように開始するのか悩んでいたら、是非お気軽にお問い合わせください。無料でご相談受け付けています。

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