SaaSが当たり前になってきた昨今、デジタル分野の領域にもプロダクトデザインという言葉が当たり前のように使われています。しかし、プロダクトデザインというと、従来は家具や車、生活家電といった消費者が手にする物理的な製品のデザインのことを指しているだけでした。しかし、PCやモバイルの普及でデジタル製品の利用が増えたため、物理的な製品でなくてもプロダクトデザインという言葉がそのまま使われています。

しかし、物理的な製品のデザインに関わってきたプロダクトデザイナーとデジタル製品のデザインのみに関わってきたデザイナーとの間では、UXデザインの捉え方と適用範囲が大きく異なります。採用や組織構成おいて、プロダクトデザイナーとUXデザイナーの役割をうまく整理できていない企業がたくさんいるのは、こういった背景が大きく影響しています。

今回はプロダクトデザインとUXデザインの違いを解説していきます。

食器や花瓶といった製品をつくるさいには、手触りや重さ、空間とのバランスなど意識してデザインしています。UXデザインのアプローチをしっかりと取っているのです。

まず、マーケティングの変化の流れを理解する

プロダクトデザインもUXデザインも、基本的には製品やサービスに関するデザインを行う点では同じですが、ずばり明確な違いは製品化までするプロセスのどこまで大きく関わるかどうかです。しかし、この関わりには、製品やサービスを売るためのマーケティングの根本的な理解と、事業者がどのようなマーケティングアプローチを取るかが大きく影響しています。

マーケティングとは製品やサービスを売りやすくするための概念や活動全てのことを意味しますが、時代ごとでマーケティングの概念とアプローチが変わっています。これは時代とともに類似製品が増えて、新しい技術が生まれ、市場が拡大し、競争力が高まっていくなかで、消費者のコミュニケーションの取り方が変わっているからです。時代にあわせた変化に適用するためのやり方を採用しないとビジネスになりにくいのです。

上記の図にあるように、以前は今ほど便利な製品を安く買える時代ではなかったため、安価で高機能な良い製品であれば売れていました。日本製の高品質な製品が世界を独占してたバブル時代が、このマーケティングを象徴していますよね。しかし、製品やサービスが溢れかえってきて、インターネットの影響で消費者が自分たちで情報を探せるようになった今、ただ良い製品を買うのではなく、製品を販売している企業への共感や、その企業の社会的責任なども考慮して買う時代になっています。ただ、良い製品を出すだけじゃビジネスになりにくい時代になっているのです。

つまり、製品やサービスの利用によって消費者が感じ取る価値観までを事業者がしっかり汲み取ってマーケティングしなければ売れない時代になっているわけです。プロダクトデザインとUXデザインを効果的に実践するためには、まず、事業者がこのマーケティング4.0と言われている概念に基づいてビジネスが行われているかどうか、ここが非常に重要です。

マーケティング4.0の影響

マーケティング4.0に基づいたビジネスを実践する場合、当然ながら製品やサービスの開発において消費者に明確な価値を伝えていく作業が必要になります。結果として、消費者は伝えられる価値に共感し、得られる体験を期待して製品やサービスを購入することになるわけですが、これを実現させるためにはUXデザインの実践が最適です。

一方で、マーケティング4.0は必要なく売れると思っているビジネスの場合。例えばスプーンやマグカップ、ノートやトイレットペーパーなどの消耗品や従来からあるプロダクトだとしましょう。こういったプロダクトはSaaSのようにプロダクト自身が会話するわけでもなく、デジタル技術が組み込まれているわけでもありません。テックに依存せずとも製造・販売できるため、使い心地の良いスプーンや持ちやすくカッコいいデザインのマグカップであれば十分売れると思ってる人が、いまだに多くいます。しかし、モノで溢れている現代において、例えスプーンやマグカップであっても、それを販売している事業者の姿や活動が消費者の購買に大きく影響しています。ついついIKEAで調理器具を買ってしまうのはなぜでしょう?安く買いたいのであれば100円均一でも同じようなものは買えます。このように従来からある製品でも、マーケティング4.0の視点をもってビジネスに取り掛からなければ、売れるものも売れない時代になっているのです。

スプーンやマグカップのデザインであっても、もちろんUXデザインの適用はできます。しかし、適用するかどうかは、事業者がどうマーケティングして販売したいのかに影響します。

つまり、どんな製品やサービスの開発であれ、ユーザー体験までをしっかり意識して販売を行うのであれば、UXデザインの実践ができるプロダクトデザイナーが必要ということです。そしてUXデザインにはコミュニケーションに関する領域が非常に大きいため、従来のプロダクトデザイナーでは対応できない範囲が多くあります。プロダクトデザインとUXデザインを区別できず効果的な製品やサービスを作れていない企業の多くは、このマーケティング4.0の捉え方が圧倒的に欠けています。

ナイキは製品開発にUXデザインを実践しています。なので、常に新しい体験を生み出すことに成功しているのです。今では当たり前の製品のカスタマイズサービスを始めたのは、大手ではナイキが初です。

プロダクトデザインとUXデザインの明確な違い

前述の背景の理解をもとに、プロダクトデザインとUXデザインの違いを今の時代に求められてる内容にそってまとめます。

  • UXデザインの主な職務範囲
    • ユーザー、市場、競合他社の調査(プロジェクトの開始時のみ)
    • 製品やサービスのコンセプト開発
    • 製品やサービスのプロトタイプ開発
    • ブランドの反映とフィードバック
  • プロダクトデザインの主な職務範囲
    • ユーザー、市場、競合他社の調査(定期的)
    • 製品やサービスの具体的な実現方法開発や設
    • 製品やサービスのロードマップの作成と管理
    • 製品やサービスのバージョン管理と更新

このように大部分で重なり合いますが、UXデザインはプロダクトデザインにおける基本的なコンセプトを作り上げる中枢の役割で、プロダクトデザインはより実務的な作業が中心です。UXデザインがなくてもプロダクトデザインのみで製品やサービスの開発はできますが、UXデザインも実践したほうが、より売れて持続してビジネスを行う可能性が高まるのです。

また、UXデザインという言葉が流行りで独り歩きしているために、専任の人材を採用する企業が多いですが、プロダクトデザインという手法の中にUXデザインというものが存在しているという捉え方が重要です。プロダクトデザインとUX デザインは全く関係ないものではなく、密接に関係しているからこそ、UX/UIデザインという表記が生まれているのも事実です。UIデザインも広い視点で捉えれば、プロダクトデザインそのものなのです。

プロダクトデザインとUXデザインをどう併用しチームビルディングするのか悩んでいたら、まずは、マーケティングをどのように行いたいのかの整理、そして製品やサービスのタイプにあわせてプロダクトデザインの専門家にまずは相談しましょう。

焦らず専門家にまず相談しよう

プロジェクトの内容に関わらず、なるべく早いタイミングでUXデザインの専門家に相談することが、UXデザインをスムーズに実践するための最善策です。場合によってはUXデザイナーが必要ではなく、UIデザイナーで対応できる話かもしれませんし、そもそもUXデザイナーという外部の専門家にお願いしなくても、チーム内のリソースだけで対応できる話かもしれません。

このような判断をプロジェクトの開始時点で行うことができれば、無駄なコストをかけずに進めることが可能です。UXデザインをどのように開始するのか悩んでいたら、是非お気軽にお問い合わせください。無料でご相談受け付けています。

無料で相談する

Free Download


無料配布

Genki Brothersでは一人でも多くの方にUX/UIデザインの理解を深めていただくために、UX/UIデザインに関してまとめたガイドラインを無料配布しています。これは、Genki Brothersの創業者であり、UX/UIデザイナーでもある私、河村が、「人との繋がり」UXデザインして立ち上げたスタートアップ事業「コネクト」をベースに書き上げたものです。この機会にご興味ありましたら、下記フォームよりお申込みください。自動返信案内にてダウンロードリンクをご案内しております。

    メールアドレス*


    *このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Google プライバシーポリシー利用規約が適用されています。