今まで様々な国で色んなクライアントの事業・製品開発に関わってきましたが、この20年のキャリアの中で現在でも残って継続して使われているものはごくわずかです。製品開発を1つのビジネス成功とするならば、明らかに成功例よりも明らかに失敗例のほうが多いです。ここで言う失敗には、プロジェクトが途中で中止になってしまったり、ローンチはしたが長く製品提供が続かなかったことなど、様々なことを含みますが、共通して言えるのはビジネスにならなかった点です。
そこで、これまでの様々なクライアントのUX/UIデザインプロジェクトの失敗例から、絶対やってはいけないNGなことを説明していきます。

UXという言葉を一般に広めたDon Norman自身が、UXとユーザビリティは同じものでないと明確に言っています。

User ExperienceとUsabilityを一緒にしないこと

驚くことにUser ExperienceとUsabilityを一緒のものとして捉えている人が未だに多くいます。しかし、大きな間違いであり、この間違いがビジネスへ大きな影響を及ぼしています。UXデザインコースを提供している学校の多くでさえ、この間違いに気づいていません。UXの詳しい説明はここでしているので、ここでの詳細は省きますが、この間違いがなぜビジネスへ大きな影響を及ぼすかというと、ずばり人件費と戦略ミスです。

UXデザインは新規事業開発または既存製品・サービスのリニューアル時に適用すべきアプローチで、コンセプトの開発です。一方、UIデザインは製品の何かしらのインターフェイスのデザインがメインで、フォームのボタンの位置やビジュアルといったユーザビリティに関することをUIデザインの中で行っていきます。

リクルートの都合上、UX/UIデザイナーと表記されることが多いため、UXデザイナーの全員がUIデザインもできるものと思われがちですが(逆もしかり)、実際にはデザイナー自身もこの違いをわかってない人が非常に多く、そのためUXデザインなのに実際に作業はUIデザインの作業だけに留まり、完全に人材のアサインミスとビジネス戦略の間にギャップが発生します。今まで見てきた失敗例の多くの原因はこれです。

戦略とはチームにとってのロードマップです。目的地にどうやって進むのか明確なロードマップがなければ、皆さん迷子になりますよね?

child looking at map

ビジネス戦略とブランド戦略が用意されていない

UXデザインもUIデザインも作業をスムーズに行うためには、ビジネス戦略とブランド戦略が欠かせません。なくても強引に進めることはできますが、結果的にはかなり高い確率で事業オーナーが描いて期待しているものとは全く異なるソリューションや製品になります。とくに見た目や製品の特徴といった部分で、取り返しがつかないようなギャップが出てきます。

ビジネス戦略は、製品やサービスをどのように段階的にバージョンアップしてくのか、プロダクト戦略のベンチマークに必ず必要ですし、何よりも、どういうビジネスコンセプトで何を達成したいのか明確なビジネスゴールが見えなければ、製品が向かうべき方向が霞んでしまいます。ブランド戦略は見た目の統一や管理には欠かせない根本的な要素で、プロジェクトが開始してからブランド戦略を急遽開発したケースを多く見てきました。

当然ですが、作業に必要なものが用意されてない状態で進めてると、プロジェクト進行中に様々な問題が出てくるのですが、この問題を軽視してる人が非常に多いです。デザイン作業だけではなく、そもそもチームワークのためにもこういった戦略は大事なのに、マネージメント経験がない人ほど、この重要性がわからずに進めています。

製品やサービスの対象になっていない人の意見を取り入れる

これは特に多くの日本の企業に当てはまることなのですが、デザインプロセスの中で特に製品やサービスの詳細に関する部分の議論や意思決定において、ビジネスのターゲットになっていない人たちの意見が多く取り入れらてしまうような仕事の進め方です。UX/UIデザインは、ユーザー中心に様々なことを設計していくのが基本的なアプローチです。つまり、実際に製品を使うユーザーの意見が最優先されるべきで、製品を使わない人の意見は全く必要ないわけではありませんが、機能やコミュニケーションを作り上げていく段階では、ターゲットユーザーを常に見据えていないといけません。

*上記図は、組織構造が階層的か平等的(フラット)か、また合意形成がトップダウンか総意かの2軸の中でそれぞれの国のビジネス文化をマッピングしています。

しかし、日本の企業のように合意形成が総意を取るビジネスの進め方だと、プロジェクトに関わっている全員が同意しなければ製品やサービスが完成しないような進め方になってしまいます。プロジェクトに関わっている全員がビジネスの対象者であれば参考すべき意見ですが、実際にはそんなケースは滅多にありません。事業オーナーや経営メンバーが実際に製品やサービスを使うわけでもないのに、ユーザビリティの部分だったり見た目の部分に関してフィードバックをすることが多く、最終的には誰のための製品なのかわからなくなることが多々あります。日本企業が開発した製品の多くが、多機能で使いにくいというのは、こういう背景から来ています。デジタル決済の方法がランダムにあふれており、小売店での支払い時に逆に決済方法の選び方に困るといった現象が起きていたりもします。

多くの意見を聞いて様々なことを判断することはもちろん意味はありますが、その意見を全て反映するかどうかはまた別の話です。合意形成が総意であることは問題ではなく、利用ユーザーに関係ない人の意見を無理に反映させることが問題なのです。

ここにあげた3つの理由は、自分が関わってきたプロジェクトでもっとも見かけるケースです。これ以外にも細かいことはたくさんありますが、まずはUXの正しい理解と、デザイン作業に必要なものは何か内容をきちんと把握することが重要です。

焦らず専門家にまず相談しよう

プロジェクトの内容に関わらず、なるべく早いタイミングでUXデザインの専門家に相談することが、UXデザインをスムーズに実践するための最善策です。場合によってはUXデザイナーが必要ではなく、UIデザイナーで対応できる話かもしれませんし、そもそもUXデザイナーという外部の専門家にお願いしなくても、チーム内のリソースだけで対応できる話かもしれません。

このような判断をプロジェクトの開始時点で行うことができれば、無駄なコストをかけずに進めることが可能です。UXデザインをどのように開始するのか悩んでいたら、是非お気軽にお問い合わせください。無料でご相談受け付けています。

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