UXデザインのプロセスの中で、ずばり一番重要なのはユーザーリサーチと断言してもいいぐらい、このユーザーリサーチをどのように行うのかで、その先の進め方に様々な影響を及します。リサーチにはオンライン上の情報を集めたり、普段の生活の中で見られる光景や顧客や近親者からの製品フィードバックなど、様々な方法があります。

しかし、こういった割と誰でもできるようなリサーチではUXデザインでは十分な効果を発揮することができません。「調べる」ことは誰でもできる作業だと思われているので、リサーチの重要性に十分な対価を感じている人が少なく、結果的にユーザーリサーチそのものを簡単に考えてしまっていることに結びついて、安易にできる方法で満足してる人が多いのです。

そこで、UXデザインの現場だけでなく、ユーザーリサーチをどのように効果的に行うべきかを実際のやり方をいくつか紹介しながらまとめていきます。

同僚との会話の中でユーザーについて話し合うのも、一種のユーザーリサーチです。しかし、多くの場合ただのお喋りで終わってしまいますが、こういった会話の中に新しい発見がある場合もあります。

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どんなケースでも、必ずユーザーインタビューを行う

インターネットのおかげで様々な情報にアクセスできるようになったため、学術論文含めて多くの根拠や分析結果を集めることができます。またChatGPTのように、AIがリサーチしてくれる時代になったので、リサーチそのものの捉え方や予算をかけて行う意味合いが大きく変わろうとしつつあります。

たしかにこれらのリサーチは役立ちますが、UXデザインの実践ではユーザーインタビューをユーザーリサーチの中心に置くべきです。オンラインリサーチやChatGPTで得た情報で判断できる内容が多いため、わざわざユーザーインタビューする必要がないと思われるかもしれませんが、それでもユーザーインタビューしてまで行う意味がたくさんあります。

まず、ユーザーリサーチでは問題や課題がどこにあるのか、なぜそれらが問題や課題なのかを把握する必要があります。しかし、問題や課題というのは当事者がどう捉えているか次第や、立場や時間がかわれば、問題や課題でなかったりするケースがあります。また、問題や課題の当事者にはバイアスがかかり、客観的な判断がしにくくなっていることもあります。また、オンラインだけに限らず、ありとあらゆるメディア上に溢れている誰でもアクセスできるような情報は、すべて誰かのフィルターを通して編集された情報であり、UXデザイナーが本当に知りたい情報、知るべき情報でなかったりします。

UXデザインでは「製品やサービスがどのようになぜそのように使われているのか」や「どう使えるようになれば新しい価値が生まれるのか」、「本当に困っている事は何なのか」といった、表面には現れにくい情報を探すことが非常に重要です。こういった情報は、製品やサービスを利用しているユーザーや、課題に直面しているユーザーに直接聞かないとわからないことが多すぎるため、ユーザーリサーチをユーザーインタビューなしで完結することは、UXデザインの実践において効果的とは言えないのです。どんな些細なことでも、必ずユーザーインタビューするべきです。そして素晴らしいのは、質問をして回答を記録できる人なら誰でもユーザーインタビューを実施できます。

ダブルダイヤモンドと呼ばれる、2005年に英国デザイン協議会で初めて導入された、デザイン思考における問題解決手法です。ユーザーインタビューは、この解決手法の中で常に中心に置かれるべき要素です。

ユーザーインタビューの行い方

まず、インタビューを行うさいに知っておかないといけないことがいくつかあります。それは

  1. たとえインタビューが状況に基づくもの であっても、質問に関する洞察を与える傾向があり、これは実際に製品やサービスを利用していることと異なる場合が多々あります。
  2. 人間には記憶の問題があり、詳細を希望するほど明確に思い出せないことがよくあります。物事がどのように起こったかではなく、起こったと思う方法で状況を語ります。
  3. 多くの場合ユーザーはデザイナーではありません。ユーザーに理想の製品やサービスを語ってもらったり、改善を提案してもらったりしてはいけません。

これらをしっかり理解した上で、ユーザーインタビューを行う前に、質問を設計する必要があります。また、ユーザー インタビューの結果を評価する際にも、これらの欠点を考慮する必要があります。

そして、理想的なユーザーインタビューは、インタビュワー(UXデザイナー)2名とユーザー1名で行うのが理想です。それは質問する人と記録する人をわけるべきだからです。インタビュワーが2名確保できない場合は、インタビューをビデオ撮影もしくは音声録音し、インタビューする人は質問だけに集中します。これは、質問をしながら記録も同時に行うと、インタビュー内容が脱線してしまい、管理が困難になってしまうからです。

また、1人でインタビューを行う場合、撮影または録画したものをただの証拠確認するためだけのものとして捉えることはよくないです。なぜなら、質問をしたときのユーザーが答える仕草や、選ぶ言葉の種類から言葉では表現できない様々な心理的要素も確認することができるため、記録内容を分析することに非常に意味があるからです。なので、インタビュワーが2名か1名かに関わらず、ビデオ撮影することを強くお勧めします。

実際にインタビューをどのように行うかですが、オフラインでユーザーがストレスを感じないリラックスできる環境の用意ができればベストです。しかし、国をまたいでのユーザーリサーチや予算や時間の関係上、実現が難しい場合がほとんどです。こういったケースではZoomなどを利用してオンラインで行われることがほとんどですが、それでも、どんな些細な内容でもオフラインでインタビューを行えるのであれば行うべきです。

それはオフラインで収集できる情報の密度と質はオンラインにはかなわないからです。質問に対して、わかりきった期待できる答えがくるだろうとしてもです。とくにソフトウェアやモバイルアプリの使い方など、デジタル製品に関するインタビューは、デバイスをどのように使ってるのか、アイトラッキングも含めて行動全てが貴重な情報になります。例えば、検索は何使ってるのかといった質問に対して、それがGoogleなのかYahooかのどのプラットフォームかの答えは重要ですが、ユーザーがそのプラットフォームにたどり着くまでに、どのような行動をして、その行動が何の理由があって行われているのかを知る必要と意味があるのです。こういった情報を得るためには、オフラインでインタビューを実施する必要があります。

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いい機材で撮影または録音できるに越したことはありませんが、モバイル端末一つで全て簡単に行うことが現代ではできます。UXデザインをより効果的に実践するためにも、必ずインタビュー模様は撮影し記録しましょう。

ユーザーインタビューの種類

ユーザーインタビューは「質問を事前に用意して、その回答を集める」といった誰もが思いつく一般的に認知されているこの方法だけではありません。様々なプロトコルを用意し質問の仕方や実施方法を変えることで、深層心理まで調査できるようなやり方がいくつかあります。ここではいくつか代表的なものを紹介します。

  1. 構造化インタビュー: 事前に設計した質問にそって進めます。設計した内容以上のことは調査しません。
  2. セミ構造化インタビュー: 事前に設計した質問と、回答中に生じるトピックスを探求する柔軟性を組み合わせます。質問をより深く掘り下げ、興味深い点についてフォローアップできるようになります。
  3. 自由形式インタビュー(非構造化): 事前に決められた質問はなく、会話は参加者の回答に基づいて自然に流れます。探索的調査や予期しない洞察の発見に最適です。
  4. コンテキストインタビュー: ユーザーが特定のタスクを実行しているときに、ユーザーの環境下で実施されます。ユーザーが自然なコンテキストで製品やサービスとのやり取りする方法についての洞察を提供します。製品やサービスの改善を考えている場合、もっとも効率がよく採用される手法です。
  5. エスノグラフィック(民族史)インタビュー: ユーザーの環境で長期間過ごし、ユーザーの行動と文化を観察・インタビューします。ユーザーの行動と動機に関する深く質的な洞察を提供します。もともとは民俗学や人類学で用いられた手法で、異民族の文化の行動様式や思考を調査するために考案されました。
  6. フォーカスグループインタビュー: モデレーターの指導のもと、複数の参加者がある定められたトピックスについて議論し、その模様を考察します。新しいアイデアを生み出し、グループの多様性を理解するのに役立ちます。ここで重要なのは、モデレーターはインタビュワーとは違うスキルが求められることです。

されどユーザーインタビューと言えど、このように聞き出し方、聞かれ方などを変えることで、得られる考察はかなり違います。プロジェクトが置かれている背景や目的をしっかり判断した上で、どのユーザーインタビューの方法を採用するのか、専門家であるUXデザイナーがリードして決めていくことがとても重要です。

また、どのユーザーインタビュー方法を採用するかの判断には、ユーザーの国籍や背景の理解もとても重要です。なぜなら、日本人のように公の場所や大勢の人の前で自分の意見を言うのにポジティブな捉え方をしていない人たちもいるからです。こういった人たちに対してフォーカスグループインタビューはあまり効果的でない可能性があるので、他の方法をUXデザイナーは採用するべきです。

焦らず専門家にまず相談しよう

プロジェクトの内容に関わらず、なるべく早いタイミングでUXデザインの専門家に相談することが、UXデザインをスムーズに実践するための最善策です。場合によってはUXデザイナーが必要ではなく、UIデザイナーで対応できる話かもしれませんし、そもそもUXデザイナーという外部の専門家にお願いしなくても、チーム内のリソースだけで対応できる話かもしれません。

このような判断をプロジェクトの開始時点で行うことができれば、無駄なコストをかけずに進めることが可能です。UXデザインをどのように開始するのか悩んでいたら、是非お気軽にお問い合わせください。無料でご相談受け付けています。

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